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記録資料一三四号

ARCHIVE134

Classified Artifact: Origin

てんげん
Document No.134-000

[ 2026.04.02 // 取得記録:A134 ]

ラベル A134 と「てんげん」の邂逅

 中等部在籍時、教室の自席の天板裏に、一枚の小さなラベルが貼られているのに気がついた。  金で箔押しされた菱形が並んだ幾何学的な紋章と「A134」の印字。図書館などで本の見返しに貼られる蔵書票ほどのサイズだった。以来今日に至るまで、私はそのラベルを紛失することなく所持し続けていた。どうしても捨てられなかったのだ。それほどまでに私を執着させた。

 後年、私はある男と知り合うことになった。彼はこのラベルを知っていた。彼はその図書館の場所を私に伝えると、それ以来姿を消した。二度と会うことはなかった。  蔵書番号「A134」。私は彼から聞いた図書館に向かい、そして一冊のファイルを確認した。

 ファイルの表紙には、あの紋章がラベルと同様、金で箔押しされていた。ファイル内の記録を読み進め、内容を精査した結果、本資料群は自身が管理・整理すべきものであると判断した。  とても読みきれない膨大な資料群。私はこのファイルを借りるために司書に声をかけると一言「それはあなたのものですから。お待ちしておりました」と、ファイルを私に押し付ける様に、もしくは関わりたくないかの様に立ち去っていった。

 自宅に持ち帰ると私はすぐに読み始めた。いてもたっても居られず、夢中で読み、戦慄し、呆然とした。  これらは何だ。資料群の中には文字情報の他にも図象記録、音響、映像記録が保存されたUSBメモリも入っていた。ファイル全体に漂う時間の流れとは裏腹に割と最近追加された資料だった。

 あまりの量に私は全体を捉えきれないものの、心のどこかでこれらを読み解き、再構成し、あらゆる手段で開示しなければと思い始めてもいた。

 そしてその資料の層に挟み込まれるようにして遺されていたのが、この一幅の書である。

 中等部時代に拾ったラベルの番号「A134」と、ファイルの内容。そして最後に見出した書「てんげん」の四文字に基づき、本アーカイブの総称を「記録資料一三四号・てんげん」とした。

ADMINISTRATOR PRIVATE NOTE // A134-ORIGIN

[ Administrator Note ]

あの日の教室。机の中で指に触れた小さな紙片。数十年を経て、ある男から示された図書館の棚に同じ番号のファイルを見つけた時、これまでの時間が一つの線で繋がった。

ファイルの中身を確認した以上、これを今の私が引き受けることに、特別な理由は必要なかった。

MEDIA RECORDS

関連する音声・映像記録

RECORD 01 : 音声記録

女性の声でおそらく宇宙の起源を呟く様に詠っている音響資料。

[ 資料内容 ]

すべては はるか太古のふたりから この宇宙は ふたりの願いから生まれたという お互いを探し求める想いが 引力を生み出し やがてそれは 宇宙を覆う呪いとなった ふたりの想いは えにしを蝕む毒となり 未来の先のそのまた先へ 撚り糸の隙間を伝いながら 時を越え 姿形を変え 生命を渡り 解けて舞い散るその日まで もはや姿をなくしたふたりには 呪い続けることしかできないのだ
RECORD 02 : 1961_COSMONAUTS

1961年2月24日 イタリアのアマチュア無線家によって録音された、未確認のソ連宇宙飛行士たちの交信音声。宇宙の「呪い」の伝導を示唆する最初の現代的記録。

[ 資料内容 ]

男: "Всё в норме. Корабль идёт на заданной высоте." (全て良好、我々の宇宙船は予定の高度を保っている) 男: "Приборы вижу. Но сигнал нечёткий... Already nothing I see." (ダイヤルは見えるがシグナルははっきりしない。もう何も見えない) 女: "Я держу правой рукой. Так мы сохраним равновесие. Посмотри скорее в иллюминатор... Посмотри на это!" (私が支えているうちにあれを。窓の外を。何か見えます。窓の外を見てください!) 男: "Что это?.. Там что-то есть!" (何だ。何だあれは) 男: "...Если мы не вернёмся, мир так ничего и не узнает." (我々が帰らなければ、世界は何も知らないままだろう) 時報アナウンス:"Московское время — восемь часов утра." (モスクワ時間 午前8時をお知らせします) (雑音)